英英辞典の仲間を持とう
僕は9年程前に、それは英語の勉強を決意しNHKラジオ講座 「英会話入門」 を聞き始めた少し後だったけれど、インドに試験設備を設置しに行った。
僕と仲間は皆英語を話せなかったが、外国への設備の設置は経験していたから、まあ何とかなるという気持ちだったと思う。
最初の頃は、みんなインドに慣れていないし、ホッタラカシもあんまりだという訳で、英語が達者な海外営業担当が色々面倒見てくれたけど、その同僚も2・3日で日本に帰り、まともに英語が話せない連中とインドに滞在することとなった。
まあ、カタコトの英語でもホテル暮らしと簡単な作業指示はできるので、インドの商社担当君(Vincentとう名前だった)とインドのワーカーとで仕事を続けた訳だ。
ところが、何日かするとお客さんであるインドの担当者との打合せを要望された。そりゃ小さい設備ではないし、設置に半年もかかるので、色々進捗の打合せや業務範囲の打合せは必要なのだ。
そんな時、いつもVincentと一緒に僕が打合せに参加した。
彼は、インドの言葉を複数語話せて英語も話せたけれど、日本語はもちろん話せない。
仕方ないので、そのVincentが英英辞典君となるのだった。
つまり僕の中学英語レベルの語彙のカタコト英語と客先のタミル語なまりの難しそうな英語の中を取り持って話をするのだ。
英語同士で話をしているのに間に人が介在する、そう英英辞典君なのだ。
例えば、客先の担当の仕事の日程が遅れて、我々の仕事に支障をきたすような時、きちんといつまでに客先がやるといったことを約束させた時のこと、
「コミットメントが大切なんだ。」と彼は言った。
「コミットメント?」と僕。
「プロミスだよ、プロミスが大切だ。」
といった具合。
英会話習得にもちろん英英辞典は有効だけど、英英辞典君の仲間もとても大切だ。
そのVincentも設備の設置が終わった半年後、勤め先の商社を離れた。いわゆるJob hoppingというやつだ。
ところが先日、Vincentから僕のパソコンのメールにLinkedInというソーシャルメディアからネットワークに加われとの写真つきのメッセージがあった。少し老けていたけど元気そうな様子で嬉しかった。
地球はますます狭くなってきている。