村上春樹のエルサレムスピーチ

村上春樹のエルサレムスピーチ

「断捨離するのよ」
女房が突然色々と整理を始めた。

断捨離・・・というと昔誰かに
「ダンシャリって知っていますか?」
と言われたことがある。

その時の僕は、「シャリ」の響きから
「新しい寿司の事だろうか?」なんて思ったりした・・・
我ながら何て単純な頭の構造なのだろう、、、

2010年に流行語に選ばれた「断捨離」ですが、
ウィキペヂアによると

断捨離は、「もったいない」という固定観念に凝り固まってしまった心を、ヨーガの行法である断行(だんぎょう)・捨行(しゃぎょう)・離行(りぎょう)を応用し、
断:入ってくるいらない物を断つ。
捨:家にずっとあるいらない物を捨てる。
離:物への執着から離れる。
として不要な物を断ち、捨てることで、物への執着から離れ、自身で作り出している重荷からの解放を図り、身軽で快適な生活と人生を手に入れることが目的である。ヨーガの行法が元になっている為、単なる片付けとは一線を引く。

そーですか・・・何だか高尚ですねぇ
単なる片付けとは違うんですか、、、

とはいえ、誰かが片付けをし始めると周りの人もつられて、片付けをするのが人の常というもの。

結局僕も少し部屋の整理をすることに。
すると本棚の奥に「心をゆさぶる平和へのメッセージ 」なる本があるのに気がついたんです。
2009年の2月にあの村上春樹さんが、エルサレム賞を受賞した時のスピーチについて書かれたものです。
2009年2月だから、あれから丸8年。
時のたつのは早いものです。

ちょっと振り返ってみましょう。確か「壁と卵」の話でした。
冒頭部分をチェックしてみましょう。

Good evening. I have come to Jerusalem today as a novelist, which is to say as a professional spinner of lies. Of course, novelists are not the only ones who tell lies.
Some politicians do it, too, as we all know.

こんばんは。今日、私は小説家として、つまりうそを紡ぐ専門家としてエルサレムに来ました。
もちろん、うそをつくのは小説家だけではありません。
知ってのとおり、なかにはうそをつく政治家もいます。

いきなりの小説家はうそつきだと切り出しています。spinner は、「紡ぎ手」tale spinner
は「作家」ですね。

うそつきと言いながら、「今日は本当のことを話す」と次のように語っています。

Today, however, I have no intention of lying. I shall try to be as honest as I can. There are only a few days in the year I do not engage in telling lies, and today happens to be one of them.

しかし今日、私はうそをつくつもりはありません。できるかぎり正直に話そうと思います。
私がうそをつかない日は1年のうちで2、3日しかないのですが、今日は偶然にもその日に当たったわけです。

  • have no intention of:~するつもりはない
    engage in:携わる

「出来るかぎり正直に話そう」の部分で“ I shall try to be as honest as I can. ”
とshall を使っているので本気度を感じますね。

そして、エルサレムに来るべきかどうか悩んだことを伝えています。
よく考えた末、エルサレムに来てメッセージを伝えることを選んだのだと。

そしてそのメッセージが有名になった「壁と卵」の話です。

“ Between a high, solid wall and an egg that breaks against it, I will always stand on the side of the egg. “
Yes, no matter how right the wall may be, how wrong the egg. I will stand with the egg.

「高く堅牢な壁と、そこにぶつかれば壊れてしまう卵があるなら、私は常に卵の側に立とう」
ええ、どんなに壁が正しくとも、どんな卵が間違っていようとも、私は卵の側に立ちます。

  • solid:堅い

そして「我々はみな卵なんだ」と次のように語っています。

I have only one thing I hope to convey to you today.
We are all human beings, individuals transcending nationality, race and religion, and we are all eggs, we are all fragile eggs faced with a solid wall called “ The System. “
To all appearances, we have no hope of winning. The wall is too high and too strong and too cold. If we have any hope of victory at all, it will have to come from our believing in the utter uniqueness and irreplaceability of our own and others’ souls and from our believing in the warmth we gain by joining souls together.

今日、私が皆さんにお伝えしたいのは、たった一つだけ。
私たちはみな、国籍や人種、宗教を超えてひとりの人間であり、体制という名の堅牢な壁と向き合う壊れやすい卵だということです。どう転んでも、私たちには勝ち目はありません。壁はあまりにも高く、あまりにも強く、そしてあまりにも冷酷です。もし我々に勝つ希望がわずかでもあるならば、私たち自身の魂も他の人の魂も、それぞれが唯一無二のものであり、掛け替えのないものなのだと信じること、そして魂が触れ合うことで得られるぬくもりによって以外にはないでしょう。

  • convey:伝える
    individual:個人
    transcend:越える
    race:人種
    religion:宗教.
    fragile:壊れやすい
    to all appearances:見たところ、どう見ても
    utter:まったくの
    uniqueness:唯一性
    irreplaceability:代わりのないこと

最後にメッセージは、次のように締めくくっています。

I am grateful to have been awarded the Jerusalem Prize.
I am grateful that my books are being read by people in many parts of the world, and I would like to express my gratitude to the readers in Israel. You are the biggest reason why I am here. And I hope we are sharing something, something very meaningful. And I am glad to have had the opportunity to speak to you here today.
Thank you very much.

エルサレム賞を授与していただき、感謝しています。
世界のさまざまな地域で私の本を読んでいただいていることにも感謝しています。そしてイスラエルの読者の皆さんにもお礼を言わせてください。皆さんのおかげで、私はここに来ることができました。そして、私は皆さんととても意味のあることを共有したいと願っています。本日は皆さんとお話しできたことをうれしく思います。どうもありがとうございました。

  • grateful:感謝して
    gratitude:感謝の気持ち
    opportunity:機会

どうでしたか?
あの当時は、エルサレム賞を受賞することに対し批判もあったかと思いますが、素晴らしいスピーチの内容ですよね。
フツーの人はまずこんなストーリーのある話はできないし、冒頭からジョークをまじえた英語なんだから流石です。

少しでもこんな風に、「英語でスピーチできるようになりたい」と思う僕でありました。

それでは又!
See you next time!




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