カサブランカとGod bless you.
インド長期出張で2か月が過ぎたころ、8月になりお盆休みで僕は一度日本に戻ることになった。
このインド出張の前には、多少なりとも英語を話さねばと思いNHKラジオの“英会話入門”を聴き始め、確か“名作映画で英会話 カサブランカ”という名前の教材で映画“カサブランカ”を見ていたのでした。
カサブランカと聞くと中年のオジサンの記憶には、トレンチコートの主人公ハンフリー・ボガードのカッコよさと“Here’s looking at you, kid.” 「君の瞳に乾杯」の名セリフ、“時の過ぎ行くままに”の有名なピアノシーンあたりが断片として残っているが、映像を見るとやはり古い映画だなーという印象は否めない。
それはともかく、この映画の会話の中で、“God bless you.”と別れの時にイングリッド・バーグマン扮するイルザがリックに語るシーンがある。
”God bless you.” 日本語訳だと「神のご加護を」と字幕表示されたと思う。
この時僕は、もちろん“God bless you.” と話したことはないし、よく考えると「神のご加護を」という日本語も話したこともない、また聞かされたこともないと思った。
うーんいつか“God bless you.” と話そうと映画を見ていた時に思ったのだった。
なぜそんな風に思ったのか、ロジカルには説明できないが、きっと映像は古いと云いながらもバーグマンの美しさに魅せられたせいだったのかもしれない。
インドから帰る時、僕たちと共に仕事をしているイケメンのエンジニア、Pradeepという名前だった、がJob hoppingで我々の仕事を離れるような噂を聞いていた。
チェンナイ空港まで見送ってくれたPradeepに、
「9月にまた会おう」と僕
しかし、彼は目をあわせない。
「仕事を辞めるのか?」
「別の会社に行くことにしたんだ」とPradeep
「そうか」と僕
「God bless you!」と思いがけず僕の口から飛び出した。
2か月間毎日一緒に仕事したPradeepは、僕をしっかり見つめ
「Thank you.」といった。彼の目に光るものが見えた。
そして再びインドに戻った時には彼の姿はなかった。
なんとこれが僕の“God bless you.“ 初体験なのであった。
もちろんいまだに、“Here’s looking at you, kid.” とは言ったことはないけれど。
名作映画でペラペラ英会話〈1〉カサブランカ (名作映画でペラペラ英会話 (1))